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『子どもが自ら考えだす 引き算の子育て』の電子版配信開始

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#子育て

大好評の子育て本『子どもが自ら考えだす 引き算の子育て』(宮本哲也、井本陽久、おおたとしまさ著)の電子版の配信が2025年2月25日(火)から開始されます!

大好評の子育て本『子どもが自ら考えだす 引き算の子育て』 電子版が配信開始!

本書は、親が「余計なことをしない」勇気を持つことが、子どもの可能性を引き出す秘訣だと説きます。

教育界の第一線で活躍する宮本哲也氏、井本陽久氏、そして教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が、それぞれの視点から、親子の関係において大切なことを語ります。

また、本書では、教えないのに子どもが夢中で考え続ける塾として話題を呼んでいる、宮本算数教室といもいもの授業の潜入ルポも収録。実際にどのような環境で、どのように子どもたちが学んでいるのか、その臨場感をリアルに体験できる内容となっています。

「いもいも」で生まれた、ある生徒の物語

著者の1人である井本氏(イモニイ)は、不登校の子もそうでない子も、ともに生き生きと学べる教室「いもいも」を主宰しています。本書の終章では、井本氏が「晴(せい)くん」という一人の子どもの変化を通じて、子どもを変えようとするのではなく、子どもを見る自分の心を変えることの大切さを語っています。

◇◇◇

『子どもが自ら考えだす 引き算の子育て』終章より

いもいもに通っていたある小4の男の子の話をします。名前は晴(せい)くん。周りのことを繊細に感じ取ることができる、とても聡明な子です。颯爽と走り回る姿はもちろん、ただぼーっと立って考えごとをしている姿まで、何から何まで絵になる! 当たり前のように「いまを生きている」子です。

でも、以前の彼はぜんぜん違っていました。まわりのみんなができることが、自分にはできない。自分が感じていること考えていることを、誰にも理解してもらえない……。

小さいながらも一生懸命みんなに加わろうと頑張るけれど、つらくて我慢しきれなくなって爆発してしまい、ますますまわりから理解されなくなる。息苦しくてどうしようもない手詰まりの状況で、いもいもに来ました。小2のときです。
しばらくはみんなの輪には入れず遠くからただその様子をじっと見ているだけでしたが、1か月、2か月と通っているうちに、少しずつ少しずつ心を許すようになり、気づけば、誰よりも目をキラキラと輝かせるような子になっていました。

小3の暮れ、お母さんからこんな連絡をいただきました。
彼のカバンから、近所のフリースクールで出された課題のプリントが見つかったのです。

「今年1年を漢字1字で表すとしたら、どんな字を選びますか?」

解答欄には「晴」と書かれ、先生からは「どういう意味?」と赤字で問いかけが添えられていました。お母さんも「これ、どういう意味?」と尋ねると、彼はこう答えました。

「オレ! 2023年はオレだった! 晴(せい)だった!」

子どもにとって、「自分が自分である」ことがどれほど大きいことか。生きていくうえで、これ以外に必要なものなんてあるだろうか?

いもいもに来て激変したように見えるけれども、「本当の彼」は、来るまえからいままで、何も変わっていないんです。ただ「自分」に戻っただけなんですね。子どもを変えようとするのではなく、子どもを見る自分の心を変える。これを肝に銘じて、子どもたちと向き合っていこうと思います。

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ありのままのその子自身を見つめることの難しさ

井本氏は、ありのままのその子自身を見つめるということについて、さらに次のように語ります。

▲本書の著者の1人である井本陽久氏。

◇◇◇

ありのままのその子自身を見つめるって、実はすごく難しい。大人は、将来のことを考えていま何をしなきゃいけない、という意識を働かせてしまいがちです。将来のことを考えると、心配に見えちゃうんですよね、子どもって。でも、そうすると、その子のいまを全然見られなくなってしまう。

その子が無防備にふっと出てきたとしても、その瞬間に心配な顔を見せたら、その子はふっと首を引っ込めちゃう。「不安」をきっかけに動くと、そうなっちゃいます。

子どもも大人も、育てば育つほど、まわりの期待に気づき、感じるようになり、まわりの期待に応えようと思えば思うほど、自分を心の奥底に小さく閉じ込めてしまう。それが苦しい。

でも、ふり返ってみて、あの時すごく力になったな、大きな支えになっていたなと思う人って、アドバイスをくれたとか、世話してくれたとかではなく、そうやって小さくなってしまっている自分に気づいて、ただ寄り添ってくれた人だと思うんです。

その子の頑張りを見つけて褒めるでもなく、良いところ・秀でたところを見つけようとするのでもなく、ただ、ありのままのその子自身がふっと出てきたときに、ちゃんとそこに注目する。ただその子がその子であるときに、『やあ』と気づいてくれる。

そんな自然な姿で、子どもたちと向き合っていくのが最善だと思っています。

◇◇◇

著者紹介

■宮本哲也
算数講師。「宮本算数教室」主宰。学生時代に塾業界に足を踏み入れ、大手進学塾講師を経て1993年に宮本算数教室を横浜に設立。無試験先着順の入室にもかかわらず、卒業生の80%は首都圏トップ校に進学した。その後、NYマンハッタンの教室移転等を経て、現在は東京都千代田区にて、小1から小6を対象に授業を行っている。著書は『賢くなるパズル』(Gakken)、『算数と国語を同時に伸ばすパズル』(小学館)、『強育論』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など多数。「情熱大陸」(MBS)、「THE 名門校」(BSテレビ東京)、「世界一受けたい授業」(日本テレビ)など多くのテレビ番組にも出演している。

■井本陽久
数学教員。私塾「いもいも」主宰。大学卒業後、母校でもある私立栄光学園中学校・高等学校の数学教師になる。20年以上前から思考力を重視するアクティブラーニング型の授業に取り組み、最難関大学合格者のみならず、数学オリンピック上位入賞者を多数輩出している。2016年、いもいもを設立。現在は小中高生を対象に、「いもいも思考力教室」「数理思考力教室」「森の教室」など、数学の枠にとらわれない教育を展開している。その独自の授業スタイルや教育観は、おおたとしまさの著書『いま、ここで輝く。』(エッセンシャル出版)に著され、「プロフェッショナル 仕事の流儀」(NHK)でも特集された。

■おおたとしまさ
教育ジャーナリスト。リクルートでの雑誌編集を経て独立。数々の育児誌・教育誌の企画・編集に携わる。現在は、幼児教育から中学受験、思春期教育、ジェンダー教育、教育虐待、不登校、教育格差問題まで多岐にわたるテーマで現場取材および執筆活動を行っている。書籍のみならず、新聞から女性誌、各種ウェブメディアまでさまざまなメディアを舞台に、取材成果を発表し、テレビ・ラジオなどへの出演や講演も多数。中高教員免許をもち、小学校教員や心理カウンセラーとしての経験もある。著書は『いま、ここで輝く。』(エッセンシャル出版)、『学校に染まるな!』(ちくまプリマー新書)など80冊以上。

『子どもが自ら考えだす 引き算の子育て』

著:宮本哲也、井本陽久、おおたとしまさ
定価:1,760円(税込)
発売日:2025年2月6日
判型:四六判/208ページ
電子版:あり
ISBN:978-4-05-306035-8
発行所:株式会社 Gakken
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