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ひよっ講座 vol.60 『50歳以上の人はDCに加入すべき?』

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ひよっ講座では一般社団法人確定拠出年金推進協会東北支部の協力のもとiDeCoについてわかりやすく解説するコラムです。既に確定拠出年金を運用している方も、これから始めてみようと思っている方も、お付き合いください。

近年、確定拠出年金(DC)が企業の退職金制度として広く注目されています。確定拠出年金は、厳密には「年金制度」であり、直接的な退職金とは異なりますが、その特徴と仕組みを理解すれば、退職金制度としても大変有効であることがわかります。今回は、「退職金としての確定拠出年金」という視点で、DCの利点を解説していきます。

1. 確定拠出年金は退職金の代替制度

確定拠出年金(企業型DCとiDeCo)は、基本的には老後の生活資金を積み立てるための制度です。しかし、その柔軟なポータビリティ(持ち運び)機能と、積み立てた資産を一時金として受け取れる仕組みがあるため、結果的に退職金と同じ効果を発揮します。企業が拠出する掛金や個人が拠出する掛金は、全額が非課税となり、受け取り時には退職所得控除や公的年金等控除を活用することで税負担を抑えられるのです。

実際、多くの企業では、企業型DCを導入する際に、従来の退職一時金制度を廃止して確定拠出年金に移行しています。これは、会社にとってもリスクやコストを軽減できることが大きな理由です。従来の退職金制度では、企業が退職時に大きな一時金を支払わなければならず、その準備が難しい場合もありました。しかし、確定拠出年金であれば、毎月の掛金を従業員の個別アカウントに積み立てていくため、企業としての負担が平準化され、財務的な負担が軽減されます。

2. 確定拠出年金は「持ち運び」できる退職金

確定拠出年金の大きな特徴は、「ポータビリティ制度」です。これは、転職や退職後でも年金資産を他の年金制度(企業型DCからiDeCoなど)に持ち運びできる制度です。伝統的な退職金制度では、退職時に一度支払われる一時金として処理され、それで終わりです。しかし、DCではその資産を老後まで保持し、運用し続けることができます。

例えば、ある企業で企業型DCに加入し、その後転職した際に新たな職場でも企業型DCがある場合、その資産を新しい企業に移換することが可能です。仮に転職先に企業型DCがない場合でも、個人型DC(iDeCo)に移換することで資産を引き続き運用することができます。これにより、退職時に一時金としてすべて受け取ることなく、資産を老後まで温存しつつ、必要に応じて受け取ることが可能になります。

3. 老後に一時金として受け取ることで退職金としての効果を発揮

確定拠出年金の受取は、60歳以降であり、これは退職時にすぐにお金を受け取れないというデメリットと考える方もいるかもしれません。しかし、実際には老後の資産形成に向けた積立金が、退職後も老後資金としてしっかり運用されるという意味で、非常に強力な「老後の退職金」としての役割を果たします。

また、確定拠出年金は一時金として受け取ることが可能です。60歳以降に一括で受け取れば、それはまさに退職金と同様の効果を持つことになります。受け取る時には「退職所得控除」が適用され、税制面でも非常に優遇されています。例えば、DCの通算拠出期間が20年を超えると、退職所得控除はさらに大きくなり、退職所得金額が非課税となる部分が増加します。

さらに、DCは公的年金等控除を利用することで、分割して年金として受け取ることも可能です。一時金か年金形式かは、個人のライフスタイルに応じて選択することができ、より柔軟な資産受取計画を立てることができます。

4. 社会全体の退職金制度としての確定拠出年金

確定拠出年金は、単なる年金制度以上の存在感を持つようになりました。従来の退職金制度が持っていたような、一度きりの支給ではなく、より長期的に、そして持続的に資産を運用・管理する仕組みとして、社会全体で重要な役割を果たしています。

確定拠出年金を導入することで、会社も従業員も、老後に向けた資産形成の計画を立てやすくなります。特に転職が当たり前となった現代では、従来型の退職金制度は時代にそぐわなくなりつつあります。確定拠出年金を退職金制度の一部として活用することで、社会全体として安定的な老後資産の確保が可能となります。

まとめ

確定拠出年金は、単なる「年金制度」としてだけでなく、社会全体の退職金制度としても活用されています。ポータビリティの機能を活用すれば、転職をしても資産を引き継ぎ、老後に向けて安定した資産形成が可能です。60歳以降に一時金として受け取れば、退職金と同様の効果を持つため、確定拠出年金は「退職金制度の進化形」と言っても過言ではありません。企業も従業員も、この制度を最大限に活用し、老後の安定を確保していくことが重要です。

本記事はライターが校正を行った上で作成した記事です。内容は2024年12月20日時点の情報のため、最新の情報とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

WRITER この記事を書いた人

一般社団法人確定拠出年金推進協会 東北支部

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