コラム⼀覧

ひよっ講座 vol.54 『ポータビリティ制度④』

お気に入り
#お金

ひよっ講座では一般社団法人確定拠出年金推進協会東北支部の協力のもとiDeCoについてわかりやすく解説するコラムです。既に確定拠出年金を運用している方も、これから始めてみようと思っている方も、お付き合いください。

■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
これまでの内容
ポータビリティ制度①>>
 ▷企業型DCから企業型DCへ、iDeCoから企業型DCへ、企業型DCからiDeCoへの移換について
ポータビリティ制度②>>

▷個人型DC(iDeCo)から企業型DC、企業型DCからiDeCoへの移管について
ポータビリティ制度③>>
▷自動移管について
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

4つの退職金制度

2018年の厚生労働省の調査によると、30人以上の従業員がいる会社で退職金制度がないのは19.5%だそうです。30人ともなるとそれなりの規模なので、退職金制度を導入しているのでしょう。

一般的に、退職金制度があると言っている中小企業は、以下の4つの制度を退職金制度と言っています。

・退職一時金(内部留保で退職金を積み立てている)
・中小企業退職金共済(中退共)
・確定給付年金(DB)
・企業型DC(退職金制度ではありません、社会全体で老後の必要資金を積み立てる制度)

退職一時金から企業型DCへの移管

今回は、退職一時金から企業型DCへの移換の注意点などをご説明します。

経営者に企業型DCを提案すると、既存の退職一時金制度を止めて、企業型DC一本に統一したいという意見を多くいただきます。

退職一時金は、退職金規程を作成し、退職者が出た時に備えて積み立てておかなくてはなりません。現金や預金で積み立てておくわけですが、中小企業に業績の変化は付きものです。ちゃんと退職金規程通りに積立てた資金があればよいのですが、積み立て不足がある場合は、企業型DCへの移換はできません。退職一時金から企業型DCに移換するということは、会社の財務から切り離され、従業員一人一人の自己責任に性質が大きく変わります。

退職一時金から企業型DCへ移換する場合、単年度での移換は法令上認められていません。4年から8年のいずれかで分割して資産を移します。このことを「分割移換」と言います。企業型DCのプランには、4年で移換することが決められているものもあります。

社員のつなぎ止めやモチベーションアップの為に退職一時金制度を導入したのは良いが、実際に、資金の管理など大変な部分も多いのです。一方、企業型DCは、掛金を拠出した時点で会社の手から離れ、従業員の自己責任となるので管理が楽です。従業員のとっても、運用次第で老後の資金が増えるメリットもあります。

経営者は、退職一時金を廃止して、企業型DCへ移換したがるのですが、実際には、従業員の同意を得るのが大変です。退職一時金があるのは、ありがたいですよね。結果、退職一時金を維持したまま、追加で企業型DCに加入するとなる場合もあります。

退職一時金制度から企業型DCへの移換は、相当の時間と専門知識が必要です。
早めに専門家にご相談することをおすすめします。

本記事はライターが校正を行った上で作成した記事です。内容は2024年7月17日時点の情報のため、最新の情報とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

WRITER この記事を書いた人

一般社団法人確定拠出年金推進協会 東北支部

  • 日々の生活に学びをプラス KU-TAN ACADEMY
  • 今から考える、未来のじぶん コラムで学ぶ 介護、相続、老後