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医療的ケアが必要なお子さんと家族のための支援ガイドブック~仙台版~

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#子育て

認定NPO法人フローレンスが、「医療的ケアが必要なお子さんと家族のための支援ガイドブック~仙台版~」(以下、医ケア児支援ガイド仙台版)を発行しました。「医ケア児支援ガイド仙台版」は、一般社団法人スペサポが札幌市在住の医療的ケア児家庭の情報不足解消を目的に制作したガイドブックを仙台市用にアップデートしたものです。

医療的ケア児はNICU・GCU・小児科で長期入院して在宅生活に移行しますが、ご家族は医療的ケアの手技やお子さんのケアを習得しながら、医療や福祉の制度に申請をしたり、自宅の環境整備をしたりと、保護者自ら様々な手配をする必要があります。住まいの地域の医療や福祉制度の情報をガイドブックに集約することで、医療的ケア児家庭が地域で暮らす基盤を整えるサポートを目的に発行されています。

宮城県および仙台市在住の医療的ケア児家庭を取り巻く環境

2023年8月に発表された宮城県の医療的ケア児支援センターの調査によると、現在、宮城県内には医療的ケア児が333人、仙台市内でも157人います(※1)。 全国の医療的ケア児の数は約2万人と推計されており、新生児医療の発達に伴い超未熟児や先天的な疾病を持つこどもが助かるケースが増えたことを背景に、年々増加傾向にあります。(※2) 宮城県内でも同様の状況が起こっていると推測されます。

※1 宮城県医療的ケア児等支援の現状と課題について(宮城県医療的ケア児等相談支援センターちるふぁ)【PDF
※2 医療的ケア児支援センター等の状況について(厚生労働省)【PDF

その一方で、仙台市における医療的ケア児支援はまだまだ不足しています。

フローレンスは仙台市で保育園事業を行う中で、医療的ケア児家庭への深刻な支援不足に直面しました。東京で2014年から取り組んできた医療的ケア児支援の知見を生かし、2021年より仙台市でも看護師がご自宅で医療的ケア児をお預かりする「医療的ケアシッター ナンシー」を開始しました。その後、2023年8月より「医療的ケアを必要とする人と家族が、笑って暮らせる」社会を目指して、医ケア児とその家族を包括的に支援する「まざらいんキャンペーン」を行い、仙台市在住の医療的ケア児家庭を対象にLINEで無料相談を行う「医ケア児おやこよりそいチャット」やお弁当をお届けする「医ケア児おやこ給食便」などの取り組みを行っています。

その中で、利用者の方々からは特にこどもの成長に合わせた情報を収集することの難しさや保護者同士のつながりの不足を訴える声が寄せられています。

Oさん(6歳の医療的ケア児を子育て中)

わたしたち家族の場合は、退院支援や在宅支援がほとんどない状態で在宅生活が始まりました。そのため、困った時に頼れる場所はかかりつけの病院しかなく、家族だけで最初の2年間を乗り切ることに。心身の疲労が重なる中で一番欲しかったのは「情報」と「つながり」です。インターネットにも情報がない、役所でも自分から聞かないと何も教えてもらえない状況はかなりつらかったですし、孤独を覚えました。今でも「まだ知らないことがあるのではないか」と不安になることがあります。

Kさん(6歳の医療的ケア児を子育て中)

病院、行政、民間施設のつながりがなく、受け身では誰も何も教えてくれないので母親が自ら情報を得て動かなければなりません。その一方で、就学や療育を受ける前は保護者同士のつながりの場がありません。
就労したいなど時代によって医療的ケア児の親のニーズは変化しますが、役所には伝わっておらず、こちらが労力をかけて何度も訴えかけなければ、実現に向けて動き出さないのが現状です。

医ケア児支援ガイド仙台版のポイント

・病院から退院した医療的ケア児家庭が安心して在宅生活を開始できるよう、必要な情報を網羅的に集約しました。ご家族だけで頑張らなくてもいいように、支援者の種類・役割、もらえる手当や受けられる福祉サービス・医療の制度、市の相談窓口一覧などの情報を、親しみやすいイラストと共に整理しています。

・フローレンスで働く医療的ケア児の親が主体となって作成し、自らの経験で困ったこと・在宅生活に移行するにあたって欲しかった情報を集約しました。

ガイドブックのダウンロードはこちらから>>

認定NPO法人フローレンス

こどもたちのために、日本を変える。フローレンスは未来を担うこどもたちを社会で育むために、事業開発、政策提言、文化創造の3つの軸で、社会課題解決と価値創造をおこなう国内最大規模のNPO法人です。

日本初の訪問型・共済型病児保育事業団体として2004年に設立し、ひとり親支援とこどもの貧困防止、こどもの虐待や親子の孤立防止、障害児家庭支援など、日本のこども・子育ての領域で総合的な活動をおこなっています。

障害児保育・家庭支援事業では、障害の有無に関わらず、すべてのこどもが保育を受けられる社会を目指して2014年に日本で初めて障害児を専門的に長時間お預かりする「障害児保育園ヘレン」を立ち上げ、2015年に保育スタッフがご家庭に訪問してお子さんを預かる「障害児訪問保育アニー」をサービスインしました。2019年からは障害児家庭を看護師が訪問してサポートする「医療的ケアシッター ナンシー」、2021年4月には障害の有無にかかわらずこどもたちが遊べる地域交流の場「インクルーシブひろば ベル」をスタートしています。
また、医療的ケア児家庭を取り巻く環境の改善に向け、関連団体とともに政策提言を行い、医療的ケア児家庭への支援を国や自治体の責務とした「医療的ケア児支援法」の成立(2021年)に貢献しました。

今後もたくさんの仲間と共に、社会に「新しいあたりまえ」をつくることを目指しています。

公式サイト>>

WRITER この記事を書いた人

私たちは「みんなで子どもたちを抱きしめ、子育てとともに何でも挑戦でき、いろんな家族の笑顔があふれる社会」の実現を目指す、社会問題解決集団フローレンスです。「訪問型病児保育」「障害児保育」「小規模保育」など、常識や固定概念にとらわれない新たな価値を創造するイノベーター集団として、これからも走り続けます。

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