高齢者の急変時の対応について

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相続の仕事で遺言執行の仕事に関わることが年に数件あります。そこで医療と介護・法規制と実務の狭間のドタバタしたことを紹介いたします。

事故や病気などで意識がなくなり、自分の意志を伝えられなくなったときに自分がどのような治療を希望し、どのような治療を拒みたいのかを判断がしっかりできる時に書きとめておいたものを事前指定書といいます。事前指定書は英語では「Advanced Directive」(アドバンスト ディレクティブ)とよばれ、個人の尊厳を重要視する欧米を中心に早くから運用、普及していたものが近年日本に入ってきました。

日本でも、最近“おまかせ医療”に疑問を抱く人や“インフォームド・コンセント”を重要視する医療者などによってこの事前指定書を普及させる動きが活発になってきています。

基本姿勢として今後の私の選択=「Let me decide(私に決めさせて)」の具体的内容を擦り合わせておく必要があります。

  • 自分の医療は自分で決めるのが治療を受ける場合の原則です。
  • すべての情報を自分できちんと把握し医師と相談しながら選択決定をしていく人もいれば

「おまかせ」で医師にすべてをゆだねる人もいます。

事前指定書とは

①リビング・ウィル(Living Will)

リビング・ウィルは元気なときからご自身の延命治療の希望などを考え、ご家族と話し合い書き記しておく生前の意思表明です。
突然の病気・事故などで意思表示ができなくなり回復が見込めず最期が近づいてしまった時にも、ご本人の希望をご家族などに伝えることができます。一度書いてみて、その後考えが変わった場合でもリビング・ウィルは何度でも書き換えることができます。自らが希望する医療やケアを受けるために大切にしていることや望んでいること、どこでどのような医療やケアを望むかを自分自身で前もって考え周囲の信頼する人たちと話し合い共有することが重要です。

もしものときのために自分が望む医療やケアについて前もって考え、家族や医療・介護の関係者と繰り返し話し合い共有する取り組みを『アドバンス・ケア・プランニング(ACP):愛称「人生会議」』と呼びます。「最期が近づいたときにどんな治療を受けたいか」・「どんな最期を迎えたいか」を元気なときから家族と話し合って書き残す「リビング・ウィル(生前の意思表明)」や自分自身の人生を振り返り、今後をどう過ごしたらよいのか等を考える「エンディングノート」をひとつのきっかけにして、『人生会議』を開きます。

人生会議で話し合う主な内容

  • 自分が大切にしていること
  • 最期のときをどこで過ごしたいか
  • 最期のときにどのような治療・ケアを望むか、または受けたくないか

レット・ミー・ディサイド(Let Me Decide

カナダのモーロイ博士の発案した事前指定書「レット・ミー・ディサイド=LMD」を基に治療法と代理人指定するところが特徴です。
これは長所でもあり短所ともなりうることですが、事前指定書はその作成のプロセスで代理人(主として家族)やかかりつけ医と話し合うプロセスが重要であり、このプロセスを発展させ本人の人生観・価値観を尊重した継続的なケアのプログラムを考えようというのが、事前ケア計画(ACP)です。ただ、ACPを普及定着させるために医療体制全体の中での位置づけや現場の意識改革および市民の死への準備教育が必要であり、まだこれからの法整備が必要な考え方です。

いのちの小びん(Vial of Life

Vial of Lifeは、もともと患者の冷蔵庫内に医療情報フォームを保管するために使用された処方ボトルにちなんで名付けられました。患者が最初にVial of Lifeキットを使い始めるときは、病歴に関する医療情報をフォームに記入します。このフォームのすべての情報は患者が提供する情報が多ければ多いほど良いとされ、患者は、血液型・病状・現在の投薬・医師の名前と連絡先・アレルギーの有無・保険情報・医師以外の緊急連絡先などの情報を記入します。
緊急時に救急隊員が特別なアレルギーや病状のある患者を適切に治療するための措置を講じることができます。さらには自分自身を識別するのに役立つ写真などもいれます。

④冥土の旅の一里塚

事前指定書「冥土の旅の一里塚」の特徴は、書類の中に救急車を“呼ぶか”“呼ばないか”という選択肢を設けたことにあります。
救急車で運ばれる先、つまり救急病院は濃厚な治療を行うことを使命としている場所(急性期病院)です。意識がなくなり自分の希望する治療を医師に伝えられない状態になって救急車に乗ると事前指定書を書いていようがいまいが、積極的な治療を受けることになります。つまり、せっかく事前指定書で“望まない治療”を選択しても救急車に乗ってしまった時点で、その希望がかなう確率はかなり低くなるということなのです。

救急車に乗らないという選択にも問題はあります。その選択をするには、本人も家族も相当の覚悟が必要になることです。救急車に乗れば助かるかもしれないという可能性を「捨てる」覚悟ができる方のみが“救急車を呼ばない“選択肢を選ぶことになります。

『それでも救急車を呼びますか―逝き方は生き方』著者:特定医療法人鴻仁会理事長 金重 哲三様より話題になった。

まとめ

終末期の場合

・リビング・ウィル事前指示書は一回きりで終わりではない。変更は随時可能です。
・患者と患者家族の意思を尊重して行動することが重要です。
・事前指定書の共通認識はまだ未成熟です。知らない人が多い。

事前指示書の意義

・本人の意識がなくなった場合に治療の選択は家族に任されることが多いが、患者が重篤であればあるほど、末期に近ければ近いほど家族や医師にとって負担となる。
・事前指示書は本人の意志疎通ができなくなったときのみ効力を発する。
・本人・代理人2名・かかりつけ医の署名(民法的に望ましいとされている署名者の手続き)。

救急医療と在宅医療

・救急医療は何が何でも助けるということ家族・本人の意志はほとんど入らない。障害もなく助かれば感謝されるが、障害が残り助からないと文句を言われることもある。
・在宅医療はいかに最期を迎えさせるかを考える。本人・家族の意思を尊重し、本人・家族と一緒に悩み苦しむが最後には満足感。そばにいない第三者が文句を言うこともあるかもしれません。

WRITER この記事を書いた人

  • 日々の生活に学びをプラス KU-TAN ACADEMY
  • 今から考える、未来のじぶん コラムで学ぶ 介護、相続、老後